先週、都内と地方都市の中間支援組織にそれぞれ、電話をかけてみた。内閣府国民生活局の統計で、NPOのニーズに中間支援組織が満足にサービスを提供できていない、しかし、自己評価では満足に使命を果たしているとのアンケート結果を見て、「実際はどうなんだろう」と知りたくて電話してみたのだが、色々と予想外に興味深い話を聞くことが出来た。
まず驚いたのが、地方都市の中間支援組織(その地区では最も設立年が古い)では、日本時間で平日のお昼前と言うのに、なんと、すぐに留守番電話に切り替わり「お名前、住所、電話番号を残してください。翌日以降対応させていただきます。」というメッセージ。どうやら、事務局にスタッフが常駐していない。その支援組織のHPには、理事として10人以上の名前がご大層に並び、使命や目的など、もったいぶって小難しい言葉で書いてあり、一見したところ、充実した支援サービスを提供している錯覚に陥るが、なるほど、この程度で支援団体とは。
ここで、ある掲示板のコメントを思いだす。NPO法人としての活動実績もないのに、あたかもあったかのごとく書類をまとめて、助成金や補助金を獲得する「理事」たちの存在と、名前だけのNPO法人。常識で考えて、中間支援団体といえどNPO法人であり、どうして、利用者から問い合わせに答えるスタッフが一名もいないのだろうか。これを、単に資金不足のため、と片付けていいのか。だいたい、この地方都市の支援団体は今年で設立10周年になろうとしているのに、この体制には問題ありだろう。
都内の支援団体の方々にはアポ無しでの突然の電話に、大変に丁寧に答えていただいたのが、せめてもの救いだったが。
ところで、なるほどこれがいわゆる「人材不足」の問題か、そこには「資金不足」問題があるわけか、と妙に納得。これでは、そのNPO法人の使命を達成するために利用者のニーズを調べるマーケティング、アセスメント、そしてPR活動などは、とてもじゃないが、絵に描いた餅だなと思った。その点については、支援団体の方々も仰っていた。マーケティング、PRなどの重要性は認識しているが、いかんせん、人手がない。NPO法人はそれを中間支援団体にニーズとして要望するが、中間支援団体も同じように「人材不足」と「資金不足」問題があるので、とてもできない、との事。
こういう状況下ではMAPなど、所詮理想論、といわれてもしょうがない、と思うなんてそうは甘い。まずは、NPO法が施行されて7年経つのに、今に至ってもまだ、「人材不足」と「資金不足」問題に対して、正面からの議論と対応策が出ていないのは、怠慢以外の何者でもない。営利企業で、こんなことまず起こりえないし、アメリカの政府機関でも、毎年監査が入るので、とても、こんな杜撰な組織体制は認められない。これだけ問題がはっきりしているのに、未だに行政からの助成金と補助金に頼ろうとするNPO法人の体質が、問題を悪化させているとしか思えない。
さらに唖然としたのが、NPO法人の活動のためのローンがあることだ。どうして、自NPO法人の活動で自立できないのに、借金をして活動をするのか、理解が出来ない。非営利団体=NPOといえば、「利益をださない慈善事業団体」というイメージがかのJAPANではあるようだが、とんでもない。非営利団体はNon-Profit Organizationの事、つまり、「利益を分配」しないのであって「収益をあげる」とは別問題である。住民のニーズに応えるために、新たなプログラムサービスの開発のために設備投資としてある程度の予算が必要なのはわかるが、「収益」の半分以上を「助成金、補助金、そして行政からの委託事業費」に頼っているNPO法人には限界がある。
もうこの体質なんて、第3セクターの体質そのままでしょ。赤字は税金でカバーして、住民のニーズにも応えていなければ、地域社会の訳にも立たない、理事とスタッフの一方的な押し付けで開発したサービスをもって「地域社会に貢献」しているとは、片腹痛い。こんなNPOが多いから、某掲示板に「釣り」のごとくかかれたコメントが、あたかも真実味を持っているような響きがある。だからこそ、アセスメント(評価)を導入にして、意味のないNPO法人は淘汰していく必要があると思う、何て書くと「ファッショ」的思想、アメリカかぶれの人間が書くことだ、と思われるんでしょうかね。
それはそれで結構。
でも、それならちゃんとコメントで反論してください。
僕のどこがどう認識不足の不勉強で偏向していて独断的なのか。
僕はNPO法人の活動が必要だからこそ、MAPなんて企画を提案したりロールモデルを描こうとしている。NPOの活動は単に「慈善」の気持ちではカバーできないくらいの地域からのニーズに応えるべき潜在的期待を自覚しているからこそ、あえて意味のないNPO法人はランキングを導入してでも淘汰されるべきだと思う。必要なところに、必要な予算が、必要な協力が得られて初めて、充実したサービスが行える。ニーズさえ正確に把握できていない、ましてや、事務スタッフもまともにいないNPO法人なんて意味あるのか、そういう意味のないところに無駄ない資源が流れているのが分かっていて何の動きもない、そこにMAPを行う困難な理由を見つけた。
「銭金の問題ではない」
そんな言葉でしか、言い返せないなら意味が無い。
昔から、TVに偉そうにしゃしゃり出てくる識者が最近の日本の社会問題は欧米化しているといって得意げになっている。だったら、そういう指摘が出来るなら、そういう問題が現れる前にちゃんと予防策を提案しないのか。そんな問題が発生して行政が、企業が対応できていないから、NPOが必要とされるんだろう。行政、企業が対応できないところに、「銭金の問題ではない」と大見得切手も所詮「銭金」なければ、欧米化した社会問題にどうやって対応するんだ。よくカウンセラーを導入とかいうが、これは「経済的安泰」があって初めて効果のある策なんだ、という事さえ知らないのか。
僕はプロ市民でもなければ、なんでもない。ただどういう訳か、大学教員になったら、僕は、シングルマザー関係、生活保護などの専門デパートメントに配属された。そこで、色々と見て、それら社会的マイノリティをメインストリームに戻すためのコストと時間の大きさを知っている。レイプされたシングルマザーがオフィスに駆け込んできた、DVでボコボコにされた母子が駆け込んできた、ホームレスの母子が居座った、そんな状況にいるからこそ、感傷的にならないからこそ、みえてくるものがあり、気持ちだけではどうにもならない、だからこそNPOの活動の可能性と意義を見ることができる。
NPOの活動は広範囲にわたる。そしてNPOは社会問題の最前線として認知され、そこに従事するものは問題解決のためのオピニオンリーダーとしてその役割を期待されているのが、アメリカでのNPO法人の姿だ。日本のNPOにも是非そうなってほしい。
MAPを行う最大の障害、それは、ぬるま湯に浸った第3セク的体質のNPO法人の野放しである。