こんにちは。
「hatehate2004さんのご質問への回答 Part III」をUPしました。
この記事の一番下にあります。
まずは、今日のNPO活動ニュースです。
ニュースを取上げるだけではあまり面白みが無いので、個人的に興味深かった「NPO活動 of the Day」として、毎日一つ取上げて、自分なりの意見を書いてみることにします。
こんにちは パソコン関連活動を支えるNPO法人専務理事、伊藤敬子さん /岐阜 毎日新聞
... 県の女性大学に入り修了した。 県IT戦略会議にも参加、東海女子短大の今井昌彦教授など、さまざまな人との出会いの中でパソコンを打ち始め、NPO設立にも加わった。 会員に満足な給料を払えないなど ...
歌って遊んで英語の授業 桐生のNPO(群馬)(群馬) 読売新聞
桐生市のNPO法人「スマイル」(仁平充子代表)が5月から、勢多・東村立のあずま小学校と中央保育園で毎週1回、歌とゲームを交えた英語の授業を行っている。 「May I come ...
NPO法人格を取得 もの創り作家の会 9日から長岡京で展覧会 京都新聞
京都の伝統産業に携わる職人が集まる「京都もの創り作家の会」(京都市北区)が、NPO法人(特定非営利活動法人)の認証を取得した。9日から、長岡京市で認証取得後初めての催しとなる展覧会を開く。関係者は ...
ヴォーリズ建築の八幡商改修工事 滋賀県、NPOや市民と協力 京都新聞
滋賀県は4日、ヴォーリズ建築である近江八幡市の県立八幡商高本館のタイル改修工事を、市民やNPO法人(特定非営利活動法人)と協力して行うと発表した。市民には、新しいタイルの選定や張り替えに参加してもらう ...
埼玉新聞 「3000万円超が架空」 適正は480万、NPOが指摘 埼玉新聞
富士見市内の認知症の姉妹が約五千万円以上のリフォーム工事を繰り返された問題で、同市消費生活相談員の竹村幸子さんと姉妹宅を調査したNPO「ピュアライフ・ネットワーク」理事長の石田隆彦さんが三日 ...
続き
僕が所属していた某関係機関では、未成年シングルマザー、少年殺人事件などは、主に(唯一ではなく)
①インセンティヴディヴァイド
②ロールモデルの欠如
③エンタイトルメントの欠如
が引き起こす「文化(社会)への関心」と「責任感」の低下の延長線上(にあると)だと認識しています。
そのため
「文化(社会)への関心」と「責任感」を上昇させるためには
①インセンティヴディヴァイドの克服
②ロールモデルの創出
③エンタイトルメントの習得
を具体策として行ってきました。
日本では、未だに公立学校は「色々な生徒が集まり、その中で切磋琢磨、勉強できる環境がある」との神話がありますが、アメリカでは伝統的な一部の公立高校を除いて、大都市部の殆どの公立学校=「貧困層の生徒の集まり」「教育の質が劣悪」「教育環境が悪い」との一般的認識です。このような学校に行っていた生徒ほど「インセンティヴディヴァイド」が大きい。つまり、インセンティヴ=意欲を生み出す「自己」を取り巻く社会的、文化的環境の質に大きく作用される現状があります。
「インセンティヴディヴァイド」が大きい生徒に共通するのは、「勉強をしたところで、個人はあらかじめ前提としてあり、それは変わる事はない」というもので、あきらめに近いものがあります。それは何も生徒個人だけの意識ではなく、親の教育に対する意識や期待の差でもあります。親の世代、あるいはそれ以上の世代から蓄積された階級差の反映とも言え、そして、教育を通じて教育の結果として生じる職業機会や所得の格差を見て育っている「学習適齢期」の生徒達の「インセンティヴディヴァイド」が低下するのはある意味当然の帰結です。
日本から見るとアメリカは、特に「アメリカンドリーム」に代表されるように、「がんばれば」や「努力すれば」などの「本人の能力や業績によって決まる」と見る「業績原理」が支配的だというイメージがありますが、実際は「親の職業や学歴、家系の収入といった属性によって社会、経済的地位がきまる」という「属性原理」です。
しかし、この現実を受け入れてしまうと、インセンティヴディヴァイドは克服できるどころか、ますます大きくなってしまう。だからといって、一方的に「お前のがんばりが、努力が足らないから成功しないんだ」という「お説教」は一切インセンティヴディヴァイドを克服するに役に立たない。そこで、一見矛盾的ではあるのですが、「がんばればできる」、「努力すればできる」という事を言葉ではなく、実際に「ロールモデル」を使い、生徒に見てもらい、コミュニケーションをとる策をとっています。
ロールモデルは、日本語で言うところの「お手本」ですが、出来るだけ僕たちの生徒が抱えるインセンティヴディヴァイドに近い、つまり似たような環境で育ち、同じような劣悪な公立学校で教育を受け、中退を経験し、しかしそこから立ち上がって「努力」をし、自己実現を達成した人を招待します。僕たちの意図は、結果としてのロールモデルだけでなく、そこにたどり着くまでにいかに「インセンティヴディヴァイド」を克服したかを学んで欲しい、というものです。
どのようなロールモデルを招待するかというと、「ロス市警の警察官」「ロス消防士」「教員」など、一般的なものです。間違っても「医者」や「弁護士」などは含まれません。
さて、その中でロールモデルも言及しますが、どうしても「訓練」という意味で「基礎教育」は必要となります。特にアメリカのように「知識を基盤とした経済」のもとでは、(基礎)教育の格差がそのまま所得の差に結びつく度合いが強まります。まあ、そのために現在アメリカやイギリスでは学力の全体的な底上げに尽力しているわけなのですが。
さて、幸いにもアメリカは「やり直しのきく社会」です。どういうことかと言えば、アメリカのような自己責任社会においては、生涯学習の機会を通じて職業的な再訓練の点でも「セーフティネット」としての再教育、再訓練の機会提供と意識が定着している。義務教育途中での中退、退学は、学習意欲や基礎学力の階層差がかなり早い時期から広がっていたものを示すが、本人の「やる気=インセンティブ」次第でいくらでもやり直しはききます。
そのために、僕の所属先でもあったような大学が「ワンストップ」として基礎教育と職業訓練コースを提供し、エンタイトルメントの習得を目指しています。入学はもちろん無試験、授業料も一年で2-3万円。ほとんどの生徒が授業料全額免除ですが。一定のコースを終えると、基礎教育にしろ職業訓練にしろ、卒業証明であったり、資格が手に入ります。そして、再教育だけでなく「就職」まで面倒をみます。LA市警とは、特に、警察学校のコースを大学で受け持ってもらい、卒業生がそのまま「警察官」になりましたし、教員でも大学教員ではありませんが、小学校などの「教師」は何人もなっています。最近は、PCデータエントリー、秘書、準看護士コースが大変評価されています。
一般的な職業は、大学構内で「職業ガイダンス」を行ったり、僕たちが実際に企業を回り就職口の確保をお願いしたりします。これは、あくまでも僕たちのプログラムに所属している生徒が対象ですが、この生徒達は前にも書きましたように、未成年のシングルマザーなど、一般的な生徒よりもはるかに、インセンティヴディヴァイドが大きい生徒達だというのは言うまでもありません。
僕たちは、実は「文化(社会)への関心」と「責任感」を高めるという使命を、「教育」を手段として生徒に最終的に「就職」という結果を持って、生徒自身で「高める」事が出来るプログラム構成にしています。何故「就職」かといえば、「就職」が、生活保護に「依存」する今の生徒の対極「経済的自立」を意味するからです。主語は、あくまでも生徒であり、生徒自身が「インセンティヴディヴァイド」を克服し、ロールモデルを「目標」にし、「エンタイトルメント」を習得しなければ、結局、それらの欠如が原因となっている「生徒自身」の「文化(社会)への関心」と「責任感」を低下をくいとめる事は、難しい。
蛇足ですが
「じゃあ、未成年の刑事事件は貧困からくる様々な要因が原因だって言うのか。未成年の問題のほとんどは貧困が原因なんてキーワードでは、今の日本の未成年の問題にアプローチするのは無理ですよ。」と知り合いから言われたことがあります。聞いてみると、日本は「豊かな社会」だからだそうです。そして「犯罪者」=「貧困者」という偏向的な考え方に僕がしばられているとの事です。
なるほど、確かに「インセンティヴディヴァイド」もある意味「一種の貧困問題」と関係していなくも無いし、それだけが唯一の原因というには、限界があるでしょう。「日本が豊かな社会」というのは一般的な認識のようですが、報道を見てもまず「普通の」という言葉がつくところからみても、また「貧困者」=「犯罪者」のレッテルは差別だという認識があるので、「貧困」という文字が最近の少年犯罪の報道で出ることはないですね。
改めていう必要も無いのですが、僕は、「貧困者」=「犯罪者」というパラダイムを支持するわけでもないし、「裕福者」=「善人」だなんてとてもじゃないが思っていません。ましてや、僕がここで書いているところに、一回でも裕福な人間がいるからダメなんだ、階級社会を潰せ、なんて、僕が生まれる10年以上も前に連呼された「マルクス主義」的な事を書いているでしょうか。実際にアメリカでの対応策を見ていただければ、そういうものではな無いですね。
僕は、一般的に言われているほど「日本は豊かな社会」だとは、残念ながら思っていません。それは、僕の使う「貧困」という意味が単に、お金や社会的地位の「なさ」を言っているのではないないからです。犯罪が絡んでいなくても未成年の「文化(社会)への関心」や「責任感」は低下している現状はあるわけで、そこにはどうしても「インセンティヴディヴァイド」が絡んでくると思います。次回、日本でのインセンティヴディヴァイドを書いてみます。
続く。